【感想】SF小説 その①

 

雑にSF小説買い集めたので、感想まとめていきます。古い作品中心です。

 

キャッチワールド(クリス・ボイス著)

キャッチワールド (1981年) (ハヤカワ文庫―SF)

西暦2015年。木星軌道上を周回する結晶生命体(クリスタロイド)が放った超高速ミサイルにより、地球の主要都市は壊滅。甚大な被害を被りながらも、かろうじて滅亡を免れた人類は、敵の故郷である可能性が最も高い星域-鷲座アルタイル-へ向け、報復艦隊を派遣します。

宇宙船を制御している”機械知性(MI)”の反抗、艦隊組織の政治的ないざこざなど、初っ端から次々と問題が生じてきて、息つく暇もありません。色んな人種が登場するのが特徴であり、艦長の田村(タムラ)には、作者の日本人に対するイメージが投影されているのかなと思います。日本の具体的な地名を交えつつ、タムラの経歴が描かれるシーンでは、作者の造詣の深さを感じさせます。きっと日本が好きだったんでしょう。

隊員とMIの意識統合、それを司る”大自我”の出現、魔術を使って悪霊リリスが召喚されたりと、終盤はわけわからんのですが、その滅茶苦茶な感じが評価されているのかもしれません。

 

人類皆殺し(トーマス・M・ディッシュ著)

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破滅テーマSF。突如謎の微細胞子がばら撒かれ、瞬く間に未知の”植物”に覆われた地球。”植物”の発育速度は尋常ではなく、現存する動植物を絶滅に追いやり、人類の生活圏もどんどん狭まっていきます。やがて、政府の機能も停止してしまい、食糧供給が追いつかず、慢性的な飢餓状態に突入します。完全な無法地帯と化した世界では、略奪者がふらつき始め、人肉を食べる人も出てきます。

ギリギリで生き延びているアンダースン一家を中心に、村落の人々のサバイバルが描かれています。極限状態の中で、変わらず愛を育む者もいれば、最後まで分かり合えない人たちもいます。きっと侵略者の直接的な攻撃がなくとも、彼らは自らの猜疑心により滅んでいたでしょう。

最終的に、侵略者は成長した”植物”の果実を収穫するために地球を訪れ、収穫完了と共に火炎放射によって世界を焼け野原にしてしまいます。そこからもう一度文明を再建できるかと思いきや、空中に舞い上がった胞子が再び根をはり、またもや”植物”がはびこり始めます。地球は侵略者の”農場”となってしまうのです。

まったく救いのない内容ですが、深緑の”植物”で覆われた地球は、案外綺麗なんじゃないかと思いました。

 

機械神アスラ(大原まり子著)

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星間戦争を描いたスペースオペラ。超能力者”紅蓮”のカリスト連邦と、機械人間”アディアプトロン”が支援する地球帝国の戦いが描かれます。カリスト連邦の総司令官であるイリヤ・セツ・ヘスは、部下のウフーラと快楽マシン(精神世界を共有してアレするための機械)に入っていたところ、何かの不具合で危うく命を落としかけます。連邦内のシステムを統括する星室庁(スター・チェンバー)と呼ばれるコンピュータを介して、敵が攻撃をかけてきたのだと判断したヘスは、地球帝国へ宣戦布告します。

戦いの中で、登場人物たちは無残に死んでいきますが、その度に死んだ記憶を持って生き返ります。やがて彼らは、生と死、世界の創造、この大宇宙を支配する機械仕掛けの神”アスラ”の存在を確信し始めます。

登場人物が多く、場面・視点が頻繁に変わるため、時系列が掴みにくいです。過去の歴史についても部分的にしか述べられず、あまりはっきりしませんでした(整理すれば分かりそう)。会話文が多く、地の文もサラっとしています。次々にSFタームが飛び出てくるタイプなので、そういうのが好きな方はハマるでしょう。個人的に気に入ったのは、”思いつき監視官”。彼らは優れた直感の持ち主であり、普通の人が見落としがちなことを指摘してくれます。

『全艦に命令する――”行動は思いつきのままに”』

 

天翔ける十字軍(ポール・アンダースン著)

「天翔ける十字軍」の画像検索結果

西暦1345年。フランスへ向かう英国軍の前に、突如巨大な宇宙船が降り立ちます。中から出てきたのは、ワースゴル星からやってきた宇宙人。彼らは光線銃を用いて、英国軍に攻撃をしかけますが、勇猛な戦士たちは光線をかいくぐって返り討ち、宇宙船を乗っ取ります。軍の指揮官であるロジャー卿は、宇宙船を使って聖地エルサレムを奪還しようと考え、ワースゴル人の捕虜を脅して宇宙船を操作させます。しかし、捕虜は素直に従わず、宇宙船の自動航行装置を作動させます。英国軍を乗せた宇宙船は、ワースゴル帝国へ向け、飛び立ってしまいます。

英国軍が無双する話です。長い間機械に頼りきりだった異星人の弱点をつき、地上での白兵戦に持ち込んで、敵をタコ殴りにし、次々に拠点を落としていきます。さらに、優れた外交技術を用いて、ワースゴル帝国の属星を味方に引き入れ、やがて星々を手中に収めます。

まるでデタラメな内容なんですが、剣と長槍、長弓を使って、はるかに格上の異星人を薙ぎ倒していく様は、爽快感があって良かったです。訳が凝っていて賛否が分かれそうかな。個人的には読みづらかったです。ロジャー卿が『殿』と呼ばれたり、一人称が『拙者』だったり。いまいち入ってきませんでした。

 

ビッグ・タイム(フリッツ・ライバー著)

ビッグ・タイム』|感想・レビュー - 読書メーター

時空間ハードSF。生死の軛から解放された人類(デーモン)は、スパイダー軍とスネーク軍に分かれて、自陣に有利なように歴史を改変する”改良戦争(チェンジ・ウォー)”を繰り広げています。果てしない改変の結果、過去・現在・未来の区別はなくなり、全ての時間と空間は”大いなる時間(ビッグ・タイム)”に内包されています。主人公のグレタは、改良戦争で傷ついた兵士を癒す看護師をしており、ビッグ・タイムの流れから隔離された”場所(プレイス)”でバーみたいなのを経営しています。”扉(ドア)”を通って、人間(デーモン)・月世界人・半人半獣などが癒しを求めて”場所”を訪れる中、突然原子爆弾が持ち込まれます。さらに、”場所”を維持している”メインテナー”が内転したことにより、彼らが存在する”場所”は虚無の中を漂流し始めます。爆発まで30分。彼らの運命やいかに!?

かなり複雑ですが、とても面白い設定だと思いました。ちょっとミステリっぽさがあるのも良い。しかし、ハードすぎるせいか、単に訳がまずいのか、遠回しな表現が多くて非常に読みづらかったです。正直、大半は理解できませんでしたが、なぜか話の流れは掴めました。『ニューロマンサー』を読んでいる時の感覚に似ています。

 

 

また適当に何冊か読んだら更新します。

 

【感想】AIR(PS2版)

 

泣きゲーの金字塔的作品。とても泣けた。

 

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青く広がる空の下で、夏は終わりなく続くとさえ思えた。

*付属説明書より引用。

 

概要

Kanon』に続く、Keyの第二作目。季節は夏、舞台は小さな港町と、僕たちが好む要素てんこ盛りの作品です。今作でも超自然的な設定が物語の核となっており、奇跡が不可能を可能にします。テーマは『家族』か、あるいはもっと広く『人と人の絆』と捉えることもできると思います。とても心温まる物語です。

 

シナリオ

本作は三部構成であり、『DREAM編』・『SUMMER編』・『AIR編』に分かれています。左から順に開放されるシステムになっています。

 

DREAM編

攻略ヒロインは神尾観鈴(かみお みすず)、遠野美凪(とおの みなぎ)、霧島佳乃(きりしま かの)の三人。サブヒロインが登場するのは、この編だけです。僕は、佳乃・美凪観鈴の順に攻略しました。

 

町の開業医である、霧島聖(きりしま ひじり)の妹。いつも右手首にバンダナを巻いており、ポテトという謎の生命体を連れている。時々、何かに憑かれたように意味不明な言動をとることがある。

取り憑いているものの正体を明かし、引き離し、彼女を苦しみから救うというのが大まかな流れ。一応本筋のヒントは登場しますが、この話だけではまだ分からないでしょう。

 

天文部に所属している少女。会話の受け答えが独特。廃駅で『みちる』という少女と一緒にいることが多い。

みちると美凪はどういう関係なのか、美凪が見ている”夢”とは何なのか。それらが明らかになるのが本ルートですが、核心部分は本筋の大きなヒントともなっています。

 

主人公・国崎往人(くにさき ゆきと)が港で出会った少女。行き場のない往人を家に泊め、夏休みの間ともに過ごすようになる。困ると「が、がお......」と言うのが口癖。

本ルートは一周目と捉えることもできると思います。往人が母親から聞かされてきた”空にいる翼を持つ少女”の話。その言い伝えと酷似した症状を示す観鈴。彼女は一体何者なのか?

 

SUMMER編

過去編。むかしむかしあるところに。”翼を持つ少女”の原点と、往人の先祖についてのお話です。急に昔話が始まり、世界観もがらりと変わって驚きましたが、終わってみると、「なるほど」となります。この編には選択肢はありません。

 

AIR

本作のグランドルート。ヒロインは神尾観鈴のみ。彼女の心境に焦点が当てられた形で、再び夏が繰り返されます。ひと夏の思い出を抱え、彼女は無限へと還っていきます。号泣必至やな。

 

樋上いたるさんの絵、なんとなく良さが分かってきました。セリフと相まって、庇護欲を掻き立てるような可愛らしさがあります。会話劇のシュールな面白さを演出するのにも一躍買っていると思います。作品の指向に非常に合っている絵だと言えます。

背景もいいですね。誰もが心に描く原風景がそこにあります。永遠に続くような、それでいて脆く、今にも消えそうな夏の情景です。

 

音楽

最高でしょう。『夏影』や『鳥の詩』など、名曲が揃っています。もう曲を聴くだけで心は夏に囚われます。シナリオや絵以上に、音楽の力によって、この作品は強烈な幻想性を帯びています。

 

雑感

  • 生まれなかった生命。ありえたかもしれない日常。夢のような時間の中で、みちるがハンバーグをほおばるシーン、涙が止まらん。
  • 悪化していく観鈴の症状。いつか良くなると諦めずに支え続ける晴子。やっと一歩踏み出せたと思ったのに、観鈴は......。砂浜で泣き叫ぶシーン、涙が止まらん。
  • 構成が素晴らしいという評判は聞いていました。つまりヒロインの行動の意味や、その時の心境が後に明らかになる構成になっている、ということ?
  • 正直、内容については腑に落ちていない箇所もありますが、分からなくても泣けました。涙腺を緩ませる術を心得ています。
  • ギャグがいいですね。独特の掛け合いに思わず笑ってしまう。
  • ハッピーエンドか、バッドエンドかで意見が分かれそうですね。僕はハッピーエンドだと信じたい。
  • この星の記憶、あらゆる災厄、人々の悲しみを翼に宿し、少女は空にいる......あぁ......。

  

親子とは、ええもんやね。

以上。

 

【感想】Fate/stay night [Realta Nua](PS2版)

 

あまりにも有名な作品。Heaven's Feel第三章公開までにやっておきたかったので。

 

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聖杯は一つきり。

奇跡を欲するなら、汝。

自らの力を以って、最強を証明せよ。

*付属説明書より引用。

 

概要

あらゆる願いを叶えるとされる"聖杯"をかけた殺し合いを描いた作品。マスターに選ばれた魔術師たちは、サーヴァント(歴史・神話上の英雄または反英雄が霊体化したもの)を使役し、最後の一人になるまで戦います。敵対キャラ含め、各々のキャラクターが聖杯戦争にかける思い、葛藤が妥協なく書かれていて、ボリューム感がすごいです。ノベルゲーにしては、かなり動きのある演出も魅力ですね。

 

シナリオ

Fate(セイバールート)、Unlimited Blade Works遠坂凛ルート)、Heaven's Feel(間桐桜ルート)の三つに分かれています。FateUBW、HFの順にルートが開くシステムになっています。

 

Fate(セイバールート)

主人公・衛宮士郎のサーヴァント、セイバーに焦点を当てたストーリー。彼女の正体と抱えている罪の意識について語られます。聖杯戦争や魔術についての基本知識が説明される場面が多く、Fateの世界観を理解するための導入編ともいえるでしょう。

 

Unlimited Blade Works遠坂凛ルート)

遠坂凛ルートなんですが、士郎とアーチャー(凛のサーヴァント)についての記述が大部分を占めています。理想を追い続ける士郎と、それを否定するアーチャー。アーチャーが士郎を敵視する理由、二人の関係性について語られます。Heaven's Feelに至るまでに士郎というキャラクターについて深く理解するためのストーリーなのかなと。

 

Heaven's Feel(間桐桜ルート)

聖杯戦争の裏側が暴かれるルート。間桐桜の秘密と、聖杯戦争の隠された真相が明らかになります(僕は半分程度しか理解できてないが……)。士郎が己の信念と戦い、桜を救い、グランドフィナーレへと至るストーリーです。劇場版にて、アニメ第三章が近々公開されますね。

 

立ち絵には若干の古さを感じますが、慣れれば(かわ)いいぞ。照れの表情にバリエーションがあったのは、個人的には高評価です。一番の魅力は戦闘シーンですね。とにかく動きがすごい。迫力があって見入ってしまいました。

 

音楽

効果音が豊富ですね。剣戟の音や風を切って走る音が、戦闘シーンを引き立てています。BGMについては、特に気に入ったものはありませんでしたが、場面に合っていて良かったと思います。

 

雑感

  • セイバールートを読めたのが案外一番の収穫かもしれません。最初は無愛想だった彼女が、徐々に感情を表に出すようになるのが良かったですね。特に、デートの後、橋の上で自身の望みを理解してくれない士郎に対して、怒りを露にするシーンが印象的です。セイバーの見方が変わりました。彼女も一人の人間なんですね。
  • Heaven's Feelは評判に違わず素晴らしい。今までの信念を貫き通すか、それを捨てて桜だけの正義の味方になるかの選択肢があり、とても熱いです。
  • 言峰綺礼さん、胡散臭いし話も長いんですが、士郎と凛からの風当たりが強くて、ちょっとかわいそう。
  • 士郎が敵に突っ込んでダメージを喰らい、意識が飛んで気づいたら朝、みたいなパターンが結構多いです。
  • かっこいいキャラクター、かっこいい文章、かっこいい台詞、かっこいい演出。これはハマる人がいるのも頷けます。
  • プレイ時間確認したら55時間でした。超大作やな。
  • なんか凛がやたら可愛くてなぁ............うーんこりゃいかん、ツンデレ萌えが再燃してしまう。
  • 桜のヒロイン性、大変よろしい。
  • イリヤァーーーーーーーーーーーーッ!
  • 型月沼に片足突っ込みました。

 

Fate関連の知識を深めていきたいと思います。まずはFate/Zero読んでみようかな。

 

【感想】セカンドノベル ~彼女の夏、15分の記憶~

 

積みゲー消化中。

 

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「全てがひとつの仮定で、仮説で」

「≪ひとつの物語≫に過ぎない」

*本編より引用

 

概要

ヒロインの語る『物語』を通して、過去に起きた事件の真相を探っていくというミステリ作品。ヒントをもとにバラバラになったシナリオを再構成していく独特のシステムが特徴です。

 

登場人物

直哉(なおや)

本作の主人公。高校時代はユウイチと彩野と仲が良かった。大学進学を機に上京して以来、5年ぶりに実家に帰省。そこで彩野と再会し、彼女の語る『物語』をもとに高校時代に起きた事件の真相を探ることになる。

 

彩野(あやの)

本作のヒロイン。ユウイチとは幼馴染だった。高校時代、ユウイチの後を追って屋上から飛び降り、その時の後遺症で15分しか記憶を保持することができない。その事件から5年後、彼女は高校を訪れ、現実に起きた事件とどことなく関連のありそうな『物語』を突然話し始める。

 

ユウイチ

直哉の友人であり、彩野の幼馴染。高校時代に屋上から飛び降り、この世を去った。彩野の語る『物語』にも、アヤノの幼馴染として登場する。

 

アヤノ

彩野の『物語』に登場する少女。高校時代の彩野がモデルになっているようだが、現実の彼女とは性格的に異なる部分が多い。

 

由加里先生

高校の国語教師。ユウイチと彩野の飛び降り事件当時を知る人物。それから5年経った現在も同じ高校に勤務している。

 

千秋(ちあき)

近所に住んでいる少女。よく高校に忍び込み、ヘッドフォンで音楽を聴いている。

 

サクラ

彩野の『物語』に登場する謎の少女。コックリさんやおまじない、学校の怪談などオカルト系に興味があり、いつもアヤノにその手の話を持ちかけている。

 

システム

本作のシナリオは「ストーリーモード」と「フラグメントモード」を交互にこなしていくことで進んでいきます。

 

ストーリーモード

彩野が語る『物語』を聞くモード。ただし、彼女が記憶を保てる間限定という制限があり、15分経つと彼女の記憶は消え、『物語』は途中で終わってしまいます。先へ進めるためにはフラグメントモードで「あらすじ」を作成する必要があります。

 

フラグメントモード

彩野が語った『物語』の「あらすじ」を作成するモード。15分間に聞いたシーンを「あらすじ」としてまとめることで、次の15分が始まる際に彼女はそれまでの『物語』を知ることができ、ストーリーモードでその先の展開を語ることができるようになります。

あるシーンの「あらすじ」を作成する際には、彩野からそれまでの「あらすじ」、もしくはストーリーモードで手に入る「キーワード」の提示を求められます。彼女の言葉を手掛かりに、正しい「あらすじ」或いは「キーワード」を選ぶことで、新たな「あらすじ」を作成することができます。

 

ストーリーモードで彩野の『物語』を聞く⇒フラグメントモードで聞いたシーンの「あらすじ」を作成する⇒ストーリーモードに戻って『物語』を先へ進める、というのを繰り返すのが基本的な流れですが、そのまま進めていくと間違った結末に至ってしまう場合があります。その際にはフラグメントモードで、その手前のシーンのどこかに「選択肢」を作成し、正しい結末を迎えるための分岐を作る必要があります。

また、「あらすじ」が作成できないこともあります。その場合、どこかのシーンの「あらすじ」が足りないため、見逃している分岐がないか、それまでの展開をもう一度見直さないといけません。

正しい結末に至ることができれば、一つの「セクション」をコンプリートしたことになり、『物語』に次のセクションへ展開する可能性が生まれます。どのシーンから分岐するのかについては、セクションコンプリート後の登場人物たちの会話の中にヒントがあります。

 

立ち絵はさらっとしていてクセの無い感じ。ギャルゲーを普段やらない人にも受け入れてもらえると思います。

背景はとても丁寧で、影とかもくっきりと描かれているんですが、丁寧すぎるためにどこか非現実感がある感じです。『物語』でもキーワードとして登場する「夕焼け」が印象的であり、オレンジ色が鮮やかすぎて、なんというか凶暴な美しさがあります。

 

音楽

落ち着いた曲がほとんどですが、謎を解明する場面などでは、映画『エクソシスト』のテーマ曲みたいな緊張感を煽るBGMが流れます。同じパターンを繰り返す感じの曲、僕は好きです。

 

雑感

  • 面白かった!システムが特殊なので進め方を理解するまで若干時間がかかりましたが、ストーリーを組み立てていく楽しさがありました。
  • セクションを進めるにつれて明らかになる『物語』と現実との関係性、飛び降り事件の真相。最後の方はボタンを押す指が止まりませんでした。
  • プレイ時間は30時間ちょいです。ゲーム性が高いので少しずつ進めていっても楽しめると思います。
  • 屋上にたたずむ少女......風になびく黒髪......フェンス越しの夕焼け空......俺たちの元型的イメージ......。
  • ゲーム内で本編に関連した短編小説を読むことができます(以下の写真を参照)。有名ライターさん達の書き下ろし作品なので、お得感があります。

 

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PSPをこんな風に使うの初めてや......

 

 

【感想】フラグタイム

 

百合アニメです。上映終わっちゃいそうだったので観に行きました(ネタバレ有り)。

 

frag-time.com

 

あらすじ

人と関わるのが苦手な主人公『森谷 美鈴(もりたに みすず)』。彼女は1日3分間だけ時間を止めることができ、都合の悪い状況になると、いつも能力を使って逃げ出していました。ある日時間止めている最中に、出来心で同じクラスの『村上 遙(むらかみ はるか)』のスカートの中を覗いてしまう森谷さん。しかし、村上さんはなぜか停止しておらず、スカートの中を覗いていたのがバレてしまいます。それをきっかけに二人は停止している時間を共に過ごすことになり、森谷さんは村上さんのことを想うようになりますが、村上さんは秘密を抱えていて......という流れ。

 

森谷さんと3分間

森谷さんは他人の悪意を恐れて人と関わるのを避けていました。彼女にとっての『3分間』は人間関係からの逃げ場として描かれています。村上さんと一緒に過ごすようになってから、彼女は初めて他人と関わることを楽しいと思うようになります。そして、村上さんに興味を持ち、村上さんのことで悩み、村上さんの本心に向き合おうとし、その過程で村上さん以外の人とも関わりを持ちます。そして、逃げ場としての『3分間』は次第に短くなり、消滅しました。彼女が求めていたのは「他人と関わり、他人のことを考える」ことであり、誰にでも合わせることができる村上さんだからこそ、人付き合いが苦手な彼女の求めていることを理解してあげられたんだと思います。

 

村上さんと3分間

村上さんは他人に合わせすぎるあまり、自分というものを失っていました。失っていたので行動するためには他人を必要としていたとも言えます。けれども、本心では自分の意思で何かしたいと望んでいて、彼女は『3分間』のうちにいたずらをしたり、服を脱いで下着だけになったりと、様々な奇行を通して自分は何がやりたいのかを見つけようとします。しかし結局、『3分間』は森谷さんが他人と向き合うようになることで消えてしまい、彼女の自分探しは完了しませんでした。

重要なのは森谷さんがその奇行を見ていたことであり、彼女は「なんでこんな事をするんだろう」と考えたことから「他人に合わせすぎて自分を失っている」という村上さんの秘密に到達します。そして、彼女がそんな村上さんを肯定することでエンディングとなります。

つまり、村上さんにとっての『3分間』は自分探しの場ではなく、森谷さんに出会うための場であったと言えます。彼女が求めていたのは、自身が嫌悪していた「他人に合わせている自分」を認めてくれる存在であり、人間関係から距離を置いていた森谷さんだからこそ、彼女を肯定的に捉えることができたんだと思います。

 

『3分間』は対極に位置する二人が出会い、互いに必要なものを補い合うための時間だったということなんだと思います。

でもこれ村上さんについてはいまいち腑に落ちない感じなんですよね。たぶん読み取れていない箇所があるんだと思います。原作漫画読めば何か分かるかもしれないので、買ってみようと思います。

 

1時間程度の短い映画なので駆け足感はありましたが、個人的には好きなタイプの百合でした。特にラストの二人が取っ組み合って感情をぶつけ合うシーンは良い。もっとやれ!!という気持ちで見てました。

 

www.youtube.com

 

【感想】映画 中二病でも恋がしたい! -Take On Me-

 

内容をまとめておきたいですが、まとまっていないかもしれない(ネタバレ有り)。

 

www.anime-chu-2.com

 

あらすじ

「戀(アニメ版2期)」終了後、新学期を間近に控えた春休みの出来事を描いています。主人公である『富樫勇太(とがし ゆうた)』は、ヒロインの『小鳥遊六花(たかなし りっか)』と恋人関係になったものの、どこか釈然としない気持ちを抱えたまま日々を送っていました。そんなある日、六花の姉『十花(とうか)』がイタリアに行くことになり、六花も一緒に連れていくと言い出します。急な展開に戸惑う勇太と六花は、友人たちの助言を受け、十花の目を逃れて駆け落ちをすることを決めるが......という流れ。

 

六花の葛藤

本作で焦点を当てているのは六花の成長であり、変わることへの葛藤です。『中二病』は六花という人間の大部分を構成しているものであり、勇太との関係もそれを前提に成り立っていました。しかし、次第に六花の中で勇太への感情が膨らんでいき、それは彼女のアイデンティティである『中二病』を喰らってしまうほど巨大になっていました。指輪を渡されたことをきっかけとして、六花はそれに気づきます。勇太が好きと言ってくれた中二病である自分が、他でもない勇太への想いによって崩壊していく。だから、その想いに歯止めをかけなければならないが、止めてしまうと勇太との関係を深めることができないというジレンマに陥ってしまいます。

 

六花と智音の違い

2期より登場した『七宮 智音(しちみや さとね)』も同様の葛藤を抱いたことがあり、彼女は『中二病』である自分を選び、勇太への想いを捨てた経験があります。その経験からか、彼女は六花に「中二病であることをやめるべき」と提案しますが、つゆり先輩から「それは当人たちが決めるべきなのでは」と指摘されます。

智音と六花では、葛藤を経験するタイミングが異なります。智音の場合は勇太との関係以前であり、六花の場合は関係以後です。関係に至る前の段階で『中二病』が勇太への想いに浸食されることを経験した智音は、『中二病』と恋愛感情は相容れないものであり、『中二病』を捨てて恋愛感情を取らなければ、ちゃんとした恋愛関係は結べないということに気づいたんだと思います。一方、六花の場合も同様に勇太への想いが『中二病』を浸食してはいたんですが、勇太が『中二病』を受け入れてしまったことで、彼女はそれに気づかないまま『中二病』と恋愛感情が両立できるものだと錯覚し、葛藤を経験するのが遅れたのではないかと思います。

また、葛藤の中心も異なるのではないかと思います。智音は中二病である自分自身を失うのを恐れていて、六花は ”勇太が好きといってくれた” 中二病である自分を失うのを恐れています。智音の悩みの中心は『自分』であり、六花の悩みの中心は『勇太』なのではないかと思います。つゆり先輩はそこに気づいたため、中心が『勇太』である以上、二人で話し合うべきなんじゃない?と言ったんだと思います。

 

勇太の真意

勇太は『中二病』と恋愛感情が相容れないものであることも、六花がいつかそれに悩む時が来ることも分かっていたんだと思います。最終的に、悩んでいる六花に対して「どんな君でもオールOKだよ!」と言いますが、彼は六花を恋愛対象として受け入れた時点(1期終了時点)でそれを既に示していたんだと思います。しかし、六花にそれを本質的に理解してもらうためには言葉で説明しても駄目で、彼女が上記の葛藤を経験することが必要であることも分かっており、悩んだ上で気持ちを打ち明けてくれる機会を待っていたんだと思います。冒頭で勇太が釈然としない気持ちを抱えているように見えたのは、その機会がなかなか訪れず、六花が悩む兆候を見せなかったからだと思います。結果的に、二人がより絆を深めるために必要だったのは、六花が葛藤の末に『中二病』か恋愛感情のいずれかを選ぶことではなく、彼女が葛藤することそのものだったのかなと。

 

当初二人を繋いだのは確かに『中二病』でしたが、恋愛感情によっても繋がりができた今となっては不要になりかけているんだと思います。六花が選んだ道は、恋愛感情と引き換えに『中二病』を切り捨てるということではなく、「恋愛感情が『中二病』を自然に喰らいつくすまで待つ」ということであり、それまでは、その二つが両立しているかのように見える仮初めの関係が続いていくのでしょう。そして、それが終わると同時に二人の関係は真に恋愛関係と呼べるものへと移行するのだと思います。

 

最後になりましたが、六花ちゃん(CV. 内田真礼)かわいいですね。ありがとうございました。

 

www.youtube.com

 

【考察】最果てのイマ

  

rdice.hatenablog.com

 

感想を書きましたが(上記リンク参照)、なんかもやもやするので考えたことを書いておきます。理解できていない箇所も多くあるので、気が向いたらもう一度シナリオ読み直して追記します。

※以下、ネタバレを多分に含みます。

 

シナリオについて

ループものなんですが、本作では実際にはループはしておらずイマジナリーネット(情報を保存する機能を持つ微生物である『ミーム』を脳に寄生させることによって多数の人間の意識を繋いで構築するネットワークのこと)の管理人である『イマ』がバラバラになった主人公の記憶を時系列順に並び替えたものだったということが最終的に分かります。場面が飛び飛びだったのは、間に何が起きたのかをプレイヤーに推測させる余地を与えるという物語上の演出であると同時に、『イマ』の仕業だったということの伏線にもなっています。

 

貴宮 忍(あてみや しのぶ)について

クラスSの現象行使者(超常現象を操ることのできる者)である彼。作中では『王』とも呼ばれています。ミームを散布して他人の脳に寄生させる能力を持ち、寄生された人間は敵性を喪失し、無条件で彼のことを愛するようになります。また、非常に高い再生能力も有しており、顔面を木っ端微塵に破壊されても瞬時に元に戻すことができます。無敵ですね。

彼の罪は二つあり、一つは『敵』を作り出してしまったことです。彼が度々予知していた『敵』とは、彼自身が形作ったイマジナリーネットによって膨大な知性が集積されたことで生まれた上位知性のようなものであり、その高度な演算処理によって負荷に耐えられなくなった端末(ミームが寄生した人間のこと)が次々にショートして死んでいったということだったと思います。その結果、世界人口は八十億人から一億人まで減ってしまいました。二つ目はヒロイン全員に手を出してしまったということです。『イマ』によってヒロインごとにルートとして配列されていますが、全ての場面が記憶の一部であるという事実から、彼が4人のヒロインと事を済ませているということが分かります。ハーレムエンドですね。けしからん(うらやましい)。

 

『聖域』について

忍は「当人たちの意思を侵害せず、かつ寂しくない程度に心を重ねることができる絶対的な距離」が存在すると考えており、その可能性を模索するために作られた集団が『聖域』だと言えます。他人を無条件で服従させる自身の力を彼は忌避しており、不必要に他人に干渉することを避けていました。けれども、幼い頃から施設育ちだったせいで機械のような合理的な考え方が沁みついてしまっており、他人と交流することで人間らしい心を形成しようとも考えていたんだと思います。他人とは深く関わりたくない一方、触れ合うべきだとも考えている。そうした矛盾が生み出した歪で中途半端な関係性が『聖域』なんだと思います。彼は『聖域』がいつか誰にとっても心の安らぐ場所になると信じていたようですが、実際には肌に合わず無理をして輪の中にいた人間もおり、沙也加からは、絶対的に誰もが満足できる距離など存在せず、適切な距離を求め続けた末に当人たちの納得と覚悟の上に成り立つのが人間関係なのだと指摘されます。

周りから見るとただ人付き合いの苦手な奴らが集まった停滞しているだけの虚しい集団であるというのが現実ですね。

 

沙也加と忍

沙也加は忍のことが好きだったんでしょうが、同時に忍がそのような感情を理解できないことも分かっていたんだと思います。しかし、その忍が沙也加のことを好きだと言いました。ここで問題なのは、忍は彼女に好意を抱いていたわけではなく、自分と同類に見えたが故に恋愛対象とすることが妥当であると合理的に判断したにすぎないということです。それに気づいた沙也加は、心を持っている自分とそうでない忍は別種の存在であり、(同類に見えるかもしれないが)実際には同類ではないのだと反論します。そして、そうやって感情を理解しないまま合理的に関係を結ぶことは、「人の心を学ぶ」という忍の目標に相反することなのではないかとも指摘します。

仮に忍に合わせる形で恋愛関係に進む場合、沙也加の考えた道は「真に忍の同類となること」と「今まで通り忍の同類に見えるように振る舞うこと」の二通りです。真に忍と同類になるということは、人の心を捨て機械的に行動するようになるということです。けれども、彼女は心を持っているおかげで忍から見て同類であるように振る舞っていられるのであり、心を捨ててしまえば沙也加はもはや今の沙也加ではなく、忍にとっては同類には見えなくなり、彼は離れていってしまう。また、今まで通り同類を演じるにしても、いつか自分はその抑圧に耐えられなくなる時が来る。どちらの道に進んでも上手くはいかないだろうと彼女は主張します。だから沙也加は、そういう関係を求めているのであれば『王』の力を使って強制的に支配してほしいと言ったのだと思います。

 

沙也加ルート1巡目のラスト

好きな感じなので引用しておきます。

忍「~~~♪」

 

どこかやつれた顔で、忍は歩く。

腕に沙也加を抱いて。

歌は流行歌だ。

疎い沙也加が、唯一好んだ流行歌。

カラオケに連れて行っても、決して歌おうとはしなかったけれど。

忍が歌うのは、楽しげに耳を傾けていた。

そして忍は二人で歩いていく。

遠くを目指して、歩いていく。

 

忍(外に行くんだ)

忍(二人で、歩いていくんだ)

忍(でもその前に)

忍(プチとマルや長老に、顔を見せていこう)

 

そして祈るのだ。

新たな二人の絶望的な門出を、どうか、

呪ってください―――

 

 

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