【感想】AIR(PS2版)

 

泣きゲーの金字塔的作品。とても泣けた。

 

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青く広がる空の下で、夏は終わりなく続くとさえ思えた。

*付属説明書より引用。

 

概要

Kanon』に続く、Keyの第二作目。季節は夏、舞台は小さな港町と、僕たちが好む要素てんこ盛りの作品です。今作でも超自然的な設定が物語の核となっており、奇跡が不可能を可能にします。テーマは『家族』か、あるいはもっと広く『人と人の絆』と捉えることもできると思います。とても心温まる物語です。

 

シナリオ

本作は三部構成であり、『DREAM編』・『SUMMER編』・『AIR編』に分かれています。左から順に開放されるシステムになっています。

 

DREAM編

攻略ヒロインは神尾観鈴(かみお みすず)、遠野美凪(とおの みなぎ)、霧島佳乃(きりしま かの)の三人。サブヒロインが登場するのは、この編だけです。僕は、佳乃・美凪観鈴の順に攻略しました。

 

町の開業医である、霧島聖(きりしま ひじり)の妹。いつも右手首にバンダナを巻いており、ポテトという謎の生命体を連れている。時々、何かに憑かれたように意味不明な言動をとることがある。

取り憑いているものの正体を明かし、引き離し、彼女を苦しみから救うというのが大まかな流れ。一応本筋のヒントは登場しますが、この話だけではまだ分からないでしょう。

 

天文部に所属している少女。会話の受け答えが独特。廃駅で『みちる』という少女と一緒にいることが多い。

みちると美凪はどういう関係なのか、美凪が見ている”夢”とは何なのか。それらが明らかになるのが本ルートですが、核心部分は本筋の大きなヒントともなっています。

 

主人公・国崎往人(くにさき ゆきと)が港で出会った少女。行き場のない往人を家に泊め、夏休みの間ともに過ごすようになる。困ると「が、がお......」と言うのが口癖。

本ルートは一周目と捉えることもできると思います。往人が母親から聞かされてきた”空にいる翼を持つ少女”の話。その言い伝えと酷似した症状を示す観鈴。彼女は一体何者なのか?

 

SUMMER編

過去編。むかしむかしあるところに。”翼を持つ少女”の原点と、往人の先祖についてのお話です。急に昔話が始まり、世界観もがらりと変わって驚きましたが、終わってみると、「なるほど」となります。この編には選択肢はありません。

 

AIR

本作のグランドルート。ヒロインは神尾観鈴のみ。彼女の心境に焦点が当てられた形で、再び夏が繰り返されます。ひと夏の思い出を抱え、彼女は無限へと還っていきます。号泣必至やな。

 

樋上いたるさんの絵、なんとなく良さが分かってきました。セリフと相まって、庇護欲を掻き立てるような可愛らしさがあります。会話劇のシュールな面白さを演出するのにも一躍買っていると思います。作品の指向に非常に合っている絵だと言えます。

背景もいいですね。誰もが心に描く原風景がそこにあります。永遠に続くような、それでいて脆く、今にも消えそうな夏の情景です。

 

音楽

最高でしょう。『夏影』や『鳥の詩』など、名曲が揃っています。もう曲を聴くだけで心は夏に囚われます。シナリオや絵以上に、音楽の力によって、この作品は強烈な幻想性を帯びています。

 

雑感

  • 生まれなかった生命。ありえたかもしれない日常。夢のような時間の中で、みちるがハンバーグをほおばるシーン、涙が止まらん。
  • 悪化していく観鈴の症状。いつか良くなると諦めずに支え続ける晴子。やっと一歩踏み出せたと思ったのに、観鈴は......。砂浜で泣き叫ぶシーン、涙が止まらん。
  • 構成が素晴らしいという評判は聞いていました。つまりヒロインの行動の意味や、その時の心境が後に明らかになる構成になっている、ということ?
  • 正直、内容については腑に落ちていない箇所もありますが、分からなくても泣けました。涙腺を緩ませる術を心得ています。
  • ギャグがいいですね。独特の掛け合いに思わず笑ってしまう。
  • ハッピーエンドか、バッドエンドかで意見が分かれそうですね。僕はハッピーエンドだと信じたい。
  • この星の記憶、あらゆる災厄、人々の悲しみを翼に宿し、少女は空にいる......あぁ......。

  

親子とは、ええもんやね。

以上。