【感想】SF小説 その①

 

雑にSF小説買い集めたので、感想まとめていきます。古い作品中心です。

 

キャッチワールド(クリス・ボイス著)

キャッチワールド (1981年) (ハヤカワ文庫―SF)

西暦2015年。木星軌道上を周回する結晶生命体(クリスタロイド)が放った超高速ミサイルにより、地球の主要都市は壊滅。甚大な被害を被りながらも、かろうじて滅亡を免れた人類は、敵の故郷である可能性が最も高い星域-鷲座アルタイル-へ向け、報復艦隊を派遣します。

宇宙船を制御している”機械知性(MI)”の反抗、艦隊組織の政治的ないざこざなど、初っ端から次々と問題が生じてきて、息つく暇もありません。色んな人種が登場するのが特徴であり、艦長の田村(タムラ)には、作者の日本人に対するイメージが投影されているのかなと思います。日本の具体的な地名を交えつつ、タムラの経歴が描かれるシーンでは、作者の造詣の深さを感じさせます。きっと日本が好きだったんでしょう。

隊員とMIの意識統合、それを司る”大自我”の出現、魔術を使って悪霊リリスが召喚されたりと、終盤はわけわからんのですが、その滅茶苦茶な感じが評価されているのかもしれません。

 

人類皆殺し(トーマス・M・ディッシュ著)

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破滅テーマSF。突如謎の微細胞子がばら撒かれ、瞬く間に未知の”植物”に覆われた地球。”植物”の発育速度は尋常ではなく、現存する動植物を絶滅に追いやり、人類の生活圏もどんどん狭まっていきます。やがて、政府の機能も停止してしまい、食糧供給が追いつかず、慢性的な飢餓状態に突入します。完全な無法地帯と化した世界では、略奪者がふらつき始め、人肉を食べる人も出てきます。

ギリギリで生き延びているアンダースン一家を中心に、村落の人々のサバイバルが描かれています。極限状態の中で、変わらず愛を育む者もいれば、最後まで分かり合えない人たちもいます。きっと侵略者の直接的な攻撃がなくとも、彼らは自らの猜疑心により滅んでいたでしょう。

最終的に、侵略者は成長した”植物”の果実を収穫するために地球を訪れ、収穫完了と共に火炎放射によって世界を焼け野原にしてしまいます。そこからもう一度文明を再建できるかと思いきや、空中に舞い上がった胞子が再び根をはり、またもや”植物”がはびこり始めます。地球は侵略者の”農場”となってしまうのです。

まったく救いのない内容ですが、深緑の”植物”で覆われた地球は、案外綺麗なんじゃないかと思いました。

 

機械神アスラ(大原まり子著)

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星間戦争を描いたスペースオペラ。超能力者”紅蓮”のカリスト連邦と、機械人間”アディアプトロン”が支援する地球帝国の戦いが描かれます。カリスト連邦の総司令官であるイリヤ・セツ・ヘスは、部下のウフーラと快楽マシン(精神世界を共有してアレするための機械)に入っていたところ、何かの不具合で危うく命を落としかけます。連邦内のシステムを統括する星室庁(スター・チェンバー)と呼ばれるコンピュータを介して、敵が攻撃をかけてきたのだと判断したヘスは、地球帝国へ宣戦布告します。

戦いの中で、登場人物たちは無残に死んでいきますが、その度に死んだ記憶を持って生き返ります。やがて彼らは、生と死、世界の創造、この大宇宙を支配する機械仕掛けの神”アスラ”の存在を確信し始めます。

登場人物が多く、場面・視点が頻繁に変わるため、時系列が掴みにくいです。過去の歴史についても部分的にしか述べられず、あまりはっきりしませんでした(整理すれば分かりそう)。会話文が多く、地の文もサラっとしています。次々にSFタームが飛び出てくるタイプなので、そういうのが好きな方はハマるでしょう。個人的に気に入ったのは、”思いつき監視官”。彼らは優れた直感の持ち主であり、普通の人が見落としがちなことを指摘してくれます。

『全艦に命令する――”行動は思いつきのままに”』

 

天翔ける十字軍(ポール・アンダースン著)

「天翔ける十字軍」の画像検索結果

西暦1345年。フランスへ向かう英国軍の前に、突如巨大な宇宙船が降り立ちます。中から出てきたのは、ワースゴル星からやってきた宇宙人。彼らは光線銃を用いて、英国軍に攻撃をしかけますが、勇猛な戦士たちは光線をかいくぐって返り討ち、宇宙船を乗っ取ります。軍の指揮官であるロジャー卿は、宇宙船を使って聖地エルサレムを奪還しようと考え、ワースゴル人の捕虜を脅して宇宙船を操作させます。しかし、捕虜は素直に従わず、宇宙船の自動航行装置を作動させます。英国軍を乗せた宇宙船は、ワースゴル帝国へ向け、飛び立ってしまいます。

英国軍が無双する話です。長い間機械に頼りきりだった異星人の弱点をつき、地上での白兵戦に持ち込んで、敵をタコ殴りにし、次々に拠点を落としていきます。さらに、優れた外交技術を用いて、ワースゴル帝国の属星を味方に引き入れ、やがて星々を手中に収めます。

まるでデタラメな内容なんですが、剣と長槍、長弓を使って、はるかに格上の異星人を薙ぎ倒していく様は、爽快感があって良かったです。訳が凝っていて賛否が分かれそうかな。個人的には読みづらかったです。ロジャー卿が『殿』と呼ばれたり、一人称が『拙者』だったり。いまいち入ってきませんでした。

 

ビッグ・タイム(フリッツ・ライバー著)

ビッグ・タイム』|感想・レビュー - 読書メーター

時空間ハードSF。生死の軛から解放された人類(デーモン)は、スパイダー軍とスネーク軍に分かれて、自陣に有利なように歴史を改変する”改良戦争(チェンジ・ウォー)”を繰り広げています。果てしない改変の結果、過去・現在・未来の区別はなくなり、全ての時間と空間は”大いなる時間(ビッグ・タイム)”に内包されています。主人公のグレタは、改良戦争で傷ついた兵士を癒す看護師をしており、ビッグ・タイムの流れから隔離された”場所(プレイス)”でバーみたいなのを経営しています。”扉(ドア)”を通って、人間(デーモン)・月世界人・半人半獣などが癒しを求めて”場所”を訪れる中、突然原子爆弾が持ち込まれます。さらに、”場所”を維持している”メインテナー”が内転したことにより、彼らが存在する”場所”は虚無の中を漂流し始めます。爆発まで30分。彼らの運命やいかに!?

かなり複雑ですが、とても面白い設定だと思いました。ちょっとミステリっぽさがあるのも良い。しかし、ハードすぎるせいか、単に訳がまずいのか、遠回しな表現が多くて非常に読みづらかったです。正直、大半は理解できませんでしたが、なぜか話の流れは掴めました。『ニューロマンサー』を読んでいる時の感覚に似ています。

 

 

また適当に何冊か読んだら更新します。