【感想】SF小説 その②

 

SFを買いすぎた男。

いつ消化できるか分からん。

 

宇宙の戦士(ロバート・A・ハインライン

宇宙の戦士

地球の安寧を脅かす異星体”クモども”。地球連邦軍に志願した主人公・ジョニーは、”強化防護服(パワード・スーツ)”を装着して戦う”機動歩兵隊”に配属され、クモどもを叩きのめすべく敵惑星への降下を繰り返します。

ジョニーの訓練校時代から始まり、士官となってクモどもの中枢に殴り込むまでのお話。この作品で描かれる宇宙戦は、宇宙空間を舞台にしたものではなく、惑星での地上戦です。作者の社会・政治思想が強調されており、あとがきで若干物議を醸しています。文章が軽快で読みやすく、戦闘描写はスピーディで引き込まれました。ジョニーの軍人魂が熱い。

 

所有せざる人々(アーシュラ・K・ル・グィン

所有せざる人々 (ハヤカワ文庫SF)

宇宙の彼方、どこかの恒星系を巡る双子惑星”ウラス”と”アナレス”。約二世紀前、ウラスで革命を起こした”オドー主義者”たちは、アナレスへ移住し、共産主義体制を確立しました。アナレス人は、権力・所有欲・利己主義に取り憑かれたウラスの社会形態を嫌悪しており、両惑星間に人の移動はなく、実利的な交易関係があるのみです。そんな中、アナレス人の理論物理学者シェヴェックは、ウラスの物理学者に招かれ、アナレスからの初めての来訪者としてウラスに降り立ちます。

現在を描いたウラス編と、シェヴェックの半生を描いたアナレス編が交互に進んでいきます。思春期、人生哲学、理論物理、社会、政治、ジェンダー、人種、あらゆる要素が含まれていますが、わざとらしさは感じられず、物語の一部として自然に受け取ることができます。共感できる部分が多く、最近読んだ中では一番良い作品でした。凝った表現もなく、読みやすいのでオススメです。

 

中継ステーション(クリフォード・D・シマック

中継ステーション〔新訳版〕 (ハヤカワ文庫 SF シ 1-5) (ハヤカワ文庫SF)

アメリカの片田舎に住んでいる主人公、イーノック。彼は南北戦争より百年以上、世間との関わりを断って、ひっそりと暮らしています。長い間老いることなく生き続けているイーノックを不審に思い、CIAは彼を監視し始めます。実は、彼の住む一軒家は、銀河を旅する異星人が立ち寄る中継ステーションであり、彼は銀河本部より任命されたステーションの管理人だったのです。

序盤の引きがちょっと弱い気がしますが、中盤から終盤にかけてボルテージが上がっていく感じがありました(ラストは蛇足かなと思いましたが)。東西冷戦期の不安感、悲観、諦念が反映されている一方で、世界平和への力強い祈りが感じられる物語です。

イーノックが時おり幻視する戦場の記憶、血と泥にまみれて立ち尽くす戦士の姿が、とても映像的で印象に残っています。ヒロインの特性がちょっとオタクっぽいのも良いですね。全宇宙を平和に導く、選ばれし感応者たる少女です。

 

分解された男(アルフレッド・ベスター

分解された男 (創元SF文庫)

透視能力を持つ人間”超感覚者”が存在する時代。彼らの出現により犯罪は激減し、人類は監視社会の中で生活しています。主人公のベン・ライクは、他惑星に事業を展開する巨大企業モナーク物産の社長。彼は、監視社会の網を上手く潜り抜け、商売敵であるクレイ・ド・コートニーの殺害を成し遂げます。刑事部長のリンカン・パウエルは、ライクが犯人だといち早く気づき、決定的証拠を挙げようと調査を始めますが、ライクはあの手この手で捜査網をかいくぐっていきます。やがて、攻防の果てに、ライクとパウエルは事件の真相にたどり着きます。

SFギミックの豊富なミステリー。いわゆるページターナーというやつですね。文体はちょっと古臭いですが、純粋に続きを読みたくなる作品です。超感覚者の精神波による会話を表現するために、版面をかなり工夫しています。独特の言い回しが多く、つい使いたくなってしまいます。『緊張、懸念、不和が来た!』

 

アインシュタイン交点(サミュエル・R・ディレイニー

アインシュタイン交点 (ハヤカワ文庫SF)

遥か未来、人類が消え去り、異生物が住み着いている地球。田舎に暮らす少年・ロービーは、想い人のフライザを殺したキッドを探し出すため、村を旅立ちます。ドラゴンを使役する一団や、旧人類の遺産であるコンピュータ、自らをシンボル化する妖女などとの出会いを経て、ロービーはキッドと対峙します。

幻想SFですね。詩的な文章と何かを暗示しているような表現。物語の大枠は掴めますが、細部はまとまりを欠いて混沌としている感じです。個人的に苦手なタイプの小説です。想像力が追いつかない。鍛えていかんとな。

 

少しずつ読んで更新していきます。