【感想】A.I. Artificial Intelligence

 

いつか感想を書きたいと思っていた映画。少し前に見返したので、あまり長くならない程度にまとめておきたい。

A.I. Artificial Intelligence (字幕版)

A.I. Artificial Intelligence (字幕版)

  • ハーレイ ジョエル オスメント
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近未来、温暖化が進んで氷が融け、町が海に沈んでしまった世界を舞台としたSF作品。人口抑制策が取られ、妊娠に許可制が設けられる一方で、技術は飛躍的に進歩しており、社会・経済活動は主にロボットが担っている。許可が得られず、子供を持てない夫婦をターゲットして開発された子供型ロボット『デイビッド』は、”愛”をインプットできる機能を持ち、テスト運用としてスウィントン夫妻の元に送られる。

分かりやすく”愛”をテーマとしており、デイビッドが人間になれると信じてブルー・フェアリーを探し求める姿は涙ぐましく、感情移入しやすいストーリーである。最終的にデイビッドの愛は受け入れられるが、この物語において、愛について最も考えさせられるのは、モニカがデイビッドを森の中に置いていく次のシーンである。

デイビッド「ピノキオみたいに本物の子供になるから」

モニカ「おとぎ話よ!」

デイビッド「でも人間になった」

モニカ「違うのよ!あなたは機械よ!」

デイビッドの無垢な愛情は、モニカの冷たい一言によって拒絶される。なんとも可哀想なシーンだが、このやり取りから愛についての様々な想念が湧いてくる。人間の持つ愛と機械の持つ愛は同じだろうかという問いから始まり、愛とは普遍的なものなのか、それとも個体ごとにユニークなもので、各個体は個別の愛の尺度をもって出来事を測っているにすぎないのか、という哲学的な思索にまで発展していく。人間と機械という明確な差異をもって(ここにSFである意味がある)”拒絶”が描かれることによって、見る者は本質へと導かれる。その意味でこの作品は『拒絶された愛の物語』*1なのである。

オールディスの原作では、デイビッドは自分と同じ筐体が並んでいるのを見て、自分は特別ではないと知って絶望する場面で終わる。対して、映画では2000年後の世界を設定し(無理矢理な感じもするが)、デイビッドは母親の愛情を手に入れて終わる。スピルバーグの優しさが表れた良いラストだと思う。物語はハッピーエンドがいいよね。

補足

愛の話なんかはそれとして、デイビッドに足りなかったのは、人間的なやり取りへの適応力だと思う。モニカの髪を切ろうとしたことも(ここで切った髪がハッピーエンドへの伏線となっており、デイビッドの失敗すらも包み込むスピルバーグの無限の優しさを感じる)、マーティンをプールに沈めてしまったことも、その場を最低リスクで切り抜ける力があれば回避できたことなんじゃなかろうか。