【感想】SF小説 その③

 

1冊読んでる間に数冊増える。

永久に抜け出せないSFの迷宮。

 

自生の夢(飛 浩隆)

自生の夢 (河出文庫)

「文字」や「音」をテーマとした短編集。濃度の高い文章に、想像力をグイグイ引きずり出されるような感じでした。個人的には『海の指』が一番良かったです。著者の本は初めてだったのですが、結構ハマりました。他の作品も読んでいこうと思います。

 

11 eleven(津原 泰水)

11 eleven (河出文庫)

幻想小説というやつ。洗練された綺麗な文章なんですが、すらすら読んでいくといつの間にか迷子になってしまうという不思議な感覚があります。女性の顔面が迫ってくる幻覚に囚われた男の物語『微笑面・改』が、印象に残っています。

 

からくりアンモラル(森 奈津子)

からくりアンモラル (ハヤカワ文庫JA)

SF要素を取り入れた官能小説集。SFマガジンの百合特集で見て購入したんですが、半年ぐらい放置してました。嫌悪感を催すようなハードプレイが登場しがちですが、その裏にある純粋な愛情には心惹かれるものがあります。一番良かったのは『いなくなった猫の話』。

 

サマー/タイム/トラベラー 全2巻(新城カズマ

サマー/タイム/トラベラー (1) (ハヤカワ文庫JA)

夏なのでタイムトラベルものをな、と思い読みました。文体にクセがあり、かなり衒学的なところが目立ちますが、それも含めて青春を感じられる作品でした。物語のラスト、ヒロインの悠有が未来へ駆けていくシーンにはじわりと涙が……。僕も”此処ではない何処かへ”行きたいなぁ~~。

 

スカイ・クロラ(森 博嗣)

スカイ・クロラ (中公文庫)

戦闘機系SFですが、ハイスピードなアクションシーンはほとんどありません。終始平坦な印象で、大切なことは行間に込められている感じ。読み取る力が足りないので、腑に落ちていない点が多いです。記述の仕方といい、テーマといい、ゼロ年代が薫り立つ作品。

 

以上。

【感想】G線上の魔王

 

るーすぼーいの作品といえば、これと車輪の国ですかね。

エロゲ界では結構有名です。

 

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真冬。

粉雪の舞う大都市に”魔王”が出没した。

望みは、無論、人間社会の崩壊である。

......少女は、正体不明の”魔王”をあぶりだすべく、

頭脳を駆使した心理戦をしかけていった。

......十年ぶりの再会――

いま、命をかけた純愛ドラマの幕が上がる――

 *パッケージ裏より引用

 

概要

裏社会を舞台とした復讐劇。ジャンルはクライムサスペンス?ミステリー?そんなところです。勇者と魔王の頭脳戦が魅力であり、緊迫感のある演出に自然と引き込まれます。本作でも、るーす特有の叙述トリックが随所に仕掛けられています。

 

シナリオ

攻略対象は4人。メインとなる勇者と魔王の復讐劇から枝分かれする形で、サブヒロインルートが展開します。サブヒロインを一人ずつ振っていけば、自ずとグランドエンドに辿り着きます。

 

美和 椿姫(みわ つばき)

主人公・浅井京介(あざい きょうすけ)のクラスメイト。純粋で人を疑うことを知らない。決して裕福ではないが、温かい家族に囲まれて育った普通の女の子。

感想

魔王の策略により家庭を破壊され、善良な心を失いかける椿姫。しかし、弟の純粋無垢な気持ちに触れ、我を取り戻します。揺るがなき信念で檻をぶち壊すタイプの物語、るーすの作品でよく見かけますが、とても好きです。京介が、身一つで若衆から椿姫の家を守ろうとするシーンは胸が熱くなりました。

 

浅井 花音(あざい かのん)

京介の義理の妹。浅井権三(京介の養父)の愛人の娘。実力あるフィギュアスケーターであり、世界へ羽ばたく素質を備えている。ブラコンなので、京介と一緒に居たがる。

感想

魔王の策略は登場しますが、核となる問題は別のところにあり。周囲から金を生む道具として見られていることに悩み、自分を見失う花音。長年寄り添ってきた母親も信じられず、情緒不安定になってしまいます。

いまいち響かない話でした。過剰な自信と強迫観念を捨て去り、どうしようもない母親を受け入れることが鍵だったということでしょうか。

 

白鳥 水羽(しらとり みずは)

京介のクラスメイト。独りでいることが多く、友人も少ない。京介を敵視しており、話しかけてもつっけんどんな態度を取る。

感想

魔王の策略により、立てこもり事件に巻き込まれる水羽。やっと再会を果たした義理の姉・時田ユキは、事件後に突如失踪してしまいます。姉を頼ってばかりだった水羽の成長物語なのですが、肝心の成長過程が見えないのが残念でした。また、姉妹の絆みたいなのも描いているのですが、この点に関しては、なぜかメインルートでのイベントの方が色濃く出ています。なので、水羽ルートはメインルートでのユキ・水羽イベントを合わせて初めて完成すると言えます。

恋人になると思い切り甘えてくるキャラ(車輪の国の灯花みたいなやつ)かと思いきや、全然甘えてくるシーンがない!!なんでや......そういうのあってもええやろ......。

珍しくバッドエンドが印象に残っているルートでもあります。

 

宇佐美 ハル(うさみ はる)

京介のクラスに転校してきた少女。本作のメインヒロインであり、自称”勇者”。顔全体が隠れるほどの長い黒髪が特徴。復讐のために”魔王”を追っている。”魔王”と渡り合う優れた頭脳を持っている。

感想

魔王の策略により、街に地獄がもたらされます。ハルが魔王を追う理由、ハルと京介の過去、魔王の正体など、次々に伏線が回収されていきます。このルートの魅力は、やはり頭脳戦でしょう。魔王の思惑を予想しながら読み進めていくのも楽しいかもしれません。

復讐が新たな復讐を呼ぶ。憎しみの連鎖を止めるため、自ら悪を被る京介、かっこよすぎませんか。ラストが救いなのか、それとも新たな連鎖への入口なのか、受け取り方次第ですね。

 

車輪の国と同じく、有葉さんの立ち絵です。ヒロインは可愛らしく、やわらかい印象があります。京介の友人である相沢栄一(あいざわ えいいち)のワル顔も面白いですし、浅井権三の立ち絵も迫力があって良いと思います。

背景は取り立てて特徴ないですが、普通に綺麗でした。

 

音楽

クラシックをアレンジしたBGMが多いです。聞いてると「ああ、あの曲か」となります。おしゃれで良いと思います。

 

その他雑感

  • 車輪の国と比べるとインパクトに欠けますが、意図的に主張を避けてサスペンス主体に仕上げているのではないかと思います。
  • 叙述トリックは小刻みなのと、大きいのがあります。しかし、あまり強くありません。(エンドロール後のアレは叙述トリックと呼べるのだろうか、騙されたけどね!)
  • 正直、サブヒロインはおまけ感がありました。あくまでもメインルートを見せたいのだなと。
  • ほとんどシリアスですが、たまに入るギャグがクスっと笑える感じで良い。

 

これで、るーす作品は制覇しました。

ん?そういえば太陽の子は......? 

 

【感想】SF小説 その②

 

SFを買いすぎた男。

いつ消化できるか分からん。

 

宇宙の戦士(ロバート・A・ハインライン

宇宙の戦士

地球の安寧を脅かす異星体”クモども”。地球連邦軍に志願した主人公・ジョニーは、”強化防護服(パワード・スーツ)”を装着して戦う”機動歩兵隊”に配属され、クモどもを叩きのめすべく敵惑星への降下を繰り返します。

ジョニーの訓練校時代から始まり、士官となってクモどもの中枢に殴り込むまでのお話。この作品で描かれる宇宙戦は、宇宙空間を舞台にしたものではなく、惑星での地上戦です。作者の社会・政治思想が強調されており、あとがきで若干物議を醸しています。文章が軽快で読みやすく、戦闘描写はスピーディで引き込まれました。ジョニーの軍人魂が熱い。

 

所有せざる人々(アーシュラ・K・ル・グィン

所有せざる人々 (ハヤカワ文庫SF)

宇宙の彼方、どこかの恒星系を巡る双子惑星”ウラス”と”アナレス”。約二世紀前、ウラスで革命を起こした”オドー主義者”たちは、アナレスへ移住し、共産主義体制を確立しました。アナレス人は、権力・所有欲・利己主義に取り憑かれたウラスの社会形態を嫌悪しており、両惑星間に人の移動はなく、実利的な交易関係があるのみです。そんな中、アナレス人の理論物理学者シェヴェックは、ウラスの物理学者に招かれ、アナレスからの初めての来訪者としてウラスに降り立ちます。

現在を描いたウラス編と、シェヴェックの半生を描いたアナレス編が交互に進んでいきます。思春期、人生哲学、理論物理、社会、政治、ジェンダー、人種、あらゆる要素が含まれていますが、わざとらしさは感じられず、物語の一部として自然に受け取ることができます。共感できる部分が多く、最近読んだ中では一番良い作品でした。凝った表現もなく、読みやすいのでオススメです。

 

中継ステーション(クリフォード・D・シマック

中継ステーション〔新訳版〕 (ハヤカワ文庫 SF シ 1-5) (ハヤカワ文庫SF)

アメリカの片田舎に住んでいる主人公、イーノック。彼は南北戦争より百年以上、世間との関わりを断って、ひっそりと暮らしています。長い間老いることなく生き続けているイーノックを不審に思い、CIAは彼を監視し始めます。実は、彼の住む一軒家は、銀河を旅する異星人が立ち寄る中継ステーションであり、彼は銀河本部より任命されたステーションの管理人だったのです。

序盤の引きがちょっと弱い気がしますが、中盤から終盤にかけてボルテージが上がっていく感じがありました(ラストは蛇足かなと思いましたが)。東西冷戦期の不安感、悲観、諦念が反映されている一方で、世界平和への力強い祈りが感じられる物語です。

イーノックが時おり幻視する戦場の記憶、血と泥にまみれて立ち尽くす戦士の姿が、とても映像的で印象に残っています。ヒロインの特性がちょっとオタクっぽいのも良いですね。全宇宙を平和に導く、選ばれし感応者たる少女です。

 

分解された男(アルフレッド・ベスター

分解された男 (創元SF文庫)

透視能力を持つ人間”超感覚者”が存在する時代。彼らの出現により犯罪は激減し、人類は監視社会の中で生活しています。主人公のベン・ライクは、他惑星に事業を展開する巨大企業モナーク物産の社長。彼は、監視社会の網を上手く潜り抜け、商売敵であるクレイ・ド・コートニーの殺害を成し遂げます。刑事部長のリンカン・パウエルは、ライクが犯人だといち早く気づき、決定的証拠を挙げようと調査を始めますが、ライクはあの手この手で捜査網をかいくぐっていきます。やがて、攻防の果てに、ライクとパウエルは事件の真相にたどり着きます。

SFギミックの豊富なミステリー。いわゆるページターナーというやつですね。文体はちょっと古臭いですが、純粋に続きを読みたくなる作品です。超感覚者の精神波による会話を表現するために、版面をかなり工夫しています。独特の言い回しが多く、つい使いたくなってしまいます。『緊張、懸念、不和が来た!』

 

アインシュタイン交点(サミュエル・R・ディレイニー

アインシュタイン交点 (ハヤカワ文庫SF)

遥か未来、人類が消え去り、異生物が住み着いている地球。田舎に暮らす少年・ロービーは、想い人のフライザを殺したキッドを探し出すため、村を旅立ちます。ドラゴンを使役する一団や、旧人類の遺産であるコンピュータ、自らをシンボル化する妖女などとの出会いを経て、ロービーはキッドと対峙します。

幻想SFですね。詩的な文章と何かを暗示しているような表現。物語の大枠は掴めますが、細部はまとまりを欠いて混沌としている感じです。個人的に苦手なタイプの小説です。想像力が追いつかない。鍛えていかんとな。

 

少しずつ読んで更新していきます。

 

【感想】SF小説 その①

 

雑にSF小説買い集めたので、感想まとめていきます。古い作品中心です。

 

キャッチワールド(クリス・ボイス著)

キャッチワールド (1981年) (ハヤカワ文庫―SF)

西暦2015年。木星軌道上を周回する結晶生命体(クリスタロイド)が放った超高速ミサイルにより、地球の主要都市は壊滅。甚大な被害を被りながらも、かろうじて滅亡を免れた人類は、敵の故郷である可能性が最も高い星域-鷲座アルタイル-へ向け、報復艦隊を派遣します。

宇宙船を制御している”機械知性(MI)”の反抗、艦隊組織の政治的ないざこざなど、初っ端から次々と問題が生じてきて、息つく暇もありません。色んな人種が登場するのが特徴であり、艦長の田村(タムラ)には、作者の日本人に対するイメージが投影されているのかなと思います。日本の具体的な地名を交えつつ、タムラの経歴が描かれるシーンでは、作者の造詣の深さを感じさせます。きっと日本が好きだったんでしょう。

隊員とMIの意識統合、それを司る”大自我”の出現、魔術を使って悪霊リリスが召喚されたりと、終盤はわけわからんのですが、その滅茶苦茶な感じが評価されているのかもしれません。

 

人類皆殺し(トーマス・M・ディッシュ著)

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破滅テーマSF。突如謎の微細胞子がばら撒かれ、瞬く間に未知の”植物”に覆われた地球。”植物”の発育速度は尋常ではなく、現存する動植物を絶滅に追いやり、人類の生活圏もどんどん狭まっていきます。やがて、政府の機能も停止してしまい、食糧供給が追いつかず、慢性的な飢餓状態に突入します。完全な無法地帯と化した世界では、略奪者がふらつき始め、人肉を食べる人も出てきます。

ギリギリで生き延びているアンダースン一家を中心に、村落の人々のサバイバルが描かれています。極限状態の中で、変わらず愛を育む者もいれば、最後まで分かり合えない人たちもいます。きっと侵略者の直接的な攻撃がなくとも、彼らは自らの猜疑心により滅んでいたでしょう。

最終的に、侵略者は成長した”植物”の果実を収穫するために地球を訪れ、収穫完了と共に火炎放射によって世界を焼け野原にしてしまいます。そこからもう一度文明を再建できるかと思いきや、空中に舞い上がった胞子が再び根をはり、またもや”植物”がはびこり始めます。地球は侵略者の”農場”となってしまうのです。

まったく救いのない内容ですが、深緑の”植物”で覆われた地球は、案外綺麗なんじゃないかと思いました。

 

機械神アスラ(大原まり子著)

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星間戦争を描いたスペースオペラ。超能力者”紅蓮”のカリスト連邦と、機械人間”アディアプトロン”が支援する地球帝国の戦いが描かれます。カリスト連邦の総司令官であるイリヤ・セツ・ヘスは、部下のウフーラと快楽マシン(精神世界を共有してアレするための機械)に入っていたところ、何かの不具合で危うく命を落としかけます。連邦内のシステムを統括する星室庁(スター・チェンバー)と呼ばれるコンピュータを介して、敵が攻撃をかけてきたのだと判断したヘスは、地球帝国へ宣戦布告します。

戦いの中で、登場人物たちは無残に死んでいきますが、その度に死んだ記憶を持って生き返ります。やがて彼らは、生と死、世界の創造、この大宇宙を支配する機械仕掛けの神”アスラ”の存在を確信し始めます。

登場人物が多く、場面・視点が頻繁に変わるため、時系列が掴みにくいです。過去の歴史についても部分的にしか述べられず、あまりはっきりしませんでした(整理すれば分かりそう)。会話文が多く、地の文もサラっとしています。次々にSFタームが飛び出てくるタイプなので、そういうのが好きな方はハマるでしょう。個人的に気に入ったのは、”思いつき監視官”。彼らは優れた直感の持ち主であり、普通の人が見落としがちなことを指摘してくれます。

『全艦に命令する――”行動は思いつきのままに”』

 

天翔ける十字軍(ポール・アンダースン著)

「天翔ける十字軍」の画像検索結果

西暦1345年。フランスへ向かう英国軍の前に、突如巨大な宇宙船が降り立ちます。中から出てきたのは、ワースゴル星からやってきた宇宙人。彼らは光線銃を用いて、英国軍に攻撃をしかけますが、勇猛な戦士たちは光線をかいくぐって返り討ち、宇宙船を乗っ取ります。軍の指揮官であるロジャー卿は、宇宙船を使って聖地エルサレムを奪還しようと考え、ワースゴル人の捕虜を脅して宇宙船を操作させます。しかし、捕虜は素直に従わず、宇宙船の自動航行装置を作動させます。英国軍を乗せた宇宙船は、ワースゴル帝国へ向け、飛び立ってしまいます。

英国軍が無双する話です。長い間機械に頼りきりだった異星人の弱点をつき、地上での白兵戦に持ち込んで、敵をタコ殴りにし、次々に拠点を落としていきます。さらに、優れた外交技術を用いて、ワースゴル帝国の属星を味方に引き入れ、やがて星々を手中に収めます。

まるでデタラメな内容なんですが、剣と長槍、長弓を使って、はるかに格上の異星人を薙ぎ倒していく様は、爽快感があって良かったです。訳が凝っていて賛否が分かれそうかな。個人的には読みづらかったです。ロジャー卿が『殿』と呼ばれたり、一人称が『拙者』だったり。いまいち入ってきませんでした。

 

ビッグ・タイム(フリッツ・ライバー著)

ビッグ・タイム』|感想・レビュー - 読書メーター

時空間ハードSF。生死の軛から解放された人類(デーモン)は、スパイダー軍とスネーク軍に分かれて、自陣に有利なように歴史を改変する”改良戦争(チェンジ・ウォー)”を繰り広げています。果てしない改変の結果、過去・現在・未来の区別はなくなり、全ての時間と空間は”大いなる時間(ビッグ・タイム)”に内包されています。主人公のグレタは、改良戦争で傷ついた兵士を癒す看護師をしており、ビッグ・タイムの流れから隔離された”場所(プレイス)”でバーみたいなのを経営しています。”扉(ドア)”を通って、人間(デーモン)・月世界人・半人半獣などが癒しを求めて”場所”を訪れる中、突然原子爆弾が持ち込まれます。さらに、”場所”を維持している”メインテナー”が内転したことにより、彼らが存在する”場所”は虚無の中を漂流し始めます。爆発まで30分。彼らの運命やいかに!?

かなり複雑ですが、とても面白い設定だと思いました。ちょっとミステリっぽさがあるのも良い。しかし、ハードすぎるせいか、単に訳がまずいのか、遠回しな表現が多くて非常に読みづらかったです。正直、大半は理解できませんでしたが、なぜか話の流れは掴めました。『ニューロマンサー』を読んでいる時の感覚に似ています。

 

 

また適当に何冊か読んだら更新します。

 

【感想】AIR(PS2版)

 

泣きゲーの金字塔的作品。とても泣けた。

 

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青く広がる空の下で、夏は終わりなく続くとさえ思えた。

*付属説明書より引用。

 

概要

Kanon』に続く、Keyの第二作目。季節は夏、舞台は小さな港町と、僕たちが好む要素てんこ盛りの作品です。今作でも超自然的な設定が物語の核となっており、奇跡が不可能を可能にします。テーマは『家族』か、あるいはもっと広く『人と人の絆』と捉えることもできると思います。とても心温まる物語です。

 

シナリオ

本作は三部構成であり、『DREAM編』・『SUMMER編』・『AIR編』に分かれています。左から順に開放されるシステムになっています。

 

DREAM編

攻略ヒロインは神尾観鈴(かみお みすず)、遠野美凪(とおの みなぎ)、霧島佳乃(きりしま かの)の三人。サブヒロインが登場するのは、この編だけです。僕は、佳乃・美凪観鈴の順に攻略しました。

 

町の開業医である、霧島聖(きりしま ひじり)の妹。いつも右手首にバンダナを巻いており、ポテトという謎の生命体を連れている。時々、何かに憑かれたように意味不明な言動をとることがある。

取り憑いているものの正体を明かし、引き離し、彼女を苦しみから救うというのが大まかな流れ。一応本筋のヒントは登場しますが、この話だけではまだ分からないでしょう。

 

天文部に所属している少女。会話の受け答えが独特。廃駅で『みちる』という少女と一緒にいることが多い。

みちると美凪はどういう関係なのか、美凪が見ている”夢”とは何なのか。それらが明らかになるのが本ルートですが、核心部分は本筋の大きなヒントともなっています。

 

主人公・国崎往人(くにさき ゆきと)が港で出会った少女。行き場のない往人を家に泊め、夏休みの間ともに過ごすようになる。困ると「が、がお......」と言うのが口癖。

本ルートは一周目と捉えることもできると思います。往人が母親から聞かされてきた”空にいる翼を持つ少女”の話。その言い伝えと酷似した症状を示す観鈴。彼女は一体何者なのか?

 

SUMMER編

過去編。むかしむかしあるところに。”翼を持つ少女”の原点と、往人の先祖についてのお話です。急に昔話が始まり、世界観もがらりと変わって驚きましたが、終わってみると、「なるほど」となります。この編には選択肢はありません。

 

AIR

本作のグランドルート。ヒロインは神尾観鈴のみ。彼女の心境に焦点が当てられた形で、再び夏が繰り返されます。ひと夏の思い出を抱え、彼女は無限へと還っていきます。号泣必至やな。

 

樋上いたるさんの絵、なんとなく良さが分かってきました。セリフと相まって、庇護欲を掻き立てるような可愛らしさがあります。会話劇のシュールな面白さを演出するのにも一躍買っていると思います。作品の指向に非常に合っている絵だと言えます。

背景もいいですね。誰もが心に描く原風景がそこにあります。永遠に続くような、それでいて脆く、今にも消えそうな夏の情景です。

 

音楽

最高でしょう。『夏影』や『鳥の詩』など、名曲が揃っています。もう曲を聴くだけで心は夏に囚われます。シナリオや絵以上に、音楽の力によって、この作品は強烈な幻想性を帯びています。

 

雑感

  • 生まれなかった生命。ありえたかもしれない日常。夢のような時間の中で、みちるがハンバーグをほおばるシーン、涙が止まらん。
  • 悪化していく観鈴の症状。いつか良くなると諦めずに支え続ける晴子。やっと一歩踏み出せたと思ったのに、観鈴は......。砂浜で泣き叫ぶシーン、涙が止まらん。
  • 構成が素晴らしいという評判は聞いていました。つまりヒロインの行動の意味や、その時の心境が後に明らかになる構成になっている、ということ?
  • 正直、内容については腑に落ちていない箇所もありますが、分からなくても泣けました。涙腺を緩ませる術を心得ています。
  • ギャグがいいですね。独特の掛け合いに思わず笑ってしまう。
  • ハッピーエンドか、バッドエンドかで意見が分かれそうですね。僕はハッピーエンドだと信じたい。
  • この星の記憶、あらゆる災厄、人々の悲しみを翼に宿し、少女は空にいる......あぁ......。

  

親子とは、ええもんやね。

以上。

 

【感想】Fate/stay night [Realta Nua](PS2版)

 

あまりにも有名な作品。Heaven's Feel第三章公開までにやっておきたかったので。

 

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聖杯は一つきり。

奇跡を欲するなら、汝。

自らの力を以って、最強を証明せよ。

*付属説明書より引用。

 

概要

あらゆる願いを叶えるとされる"聖杯"をかけた殺し合いを描いた作品。マスターに選ばれた魔術師たちは、サーヴァント(歴史・神話上の英雄または反英雄が霊体化したもの)を使役し、最後の一人になるまで戦います。敵対キャラ含め、各々のキャラクターが聖杯戦争にかける思い、葛藤が妥協なく書かれていて、ボリューム感がすごいです。ノベルゲーにしては、かなり動きのある演出も魅力ですね。

 

シナリオ

Fate(セイバールート)、Unlimited Blade Works遠坂凛ルート)、Heaven's Feel(間桐桜ルート)の三つに分かれています。FateUBW、HFの順にルートが開くシステムになっています。

 

Fate(セイバールート)

主人公・衛宮士郎のサーヴァント、セイバーに焦点を当てたストーリー。彼女の正体と抱えている罪の意識について語られます。聖杯戦争や魔術についての基本知識が説明される場面が多く、Fateの世界観を理解するための導入編ともいえるでしょう。

 

Unlimited Blade Works遠坂凛ルート)

遠坂凛ルートなんですが、士郎とアーチャー(凛のサーヴァント)についての記述が大部分を占めています。理想を追い続ける士郎と、それを否定するアーチャー。アーチャーが士郎を敵視する理由、二人の関係性について語られます。Heaven's Feelに至るまでに士郎というキャラクターについて深く理解するためのストーリーなのかなと。

 

Heaven's Feel(間桐桜ルート)

聖杯戦争の裏側が暴かれるルート。間桐桜の秘密と、聖杯戦争の隠された真相が明らかになります(僕は半分程度しか理解できてないが……)。士郎が己の信念と戦い、桜を救い、グランドフィナーレへと至るストーリーです。劇場版にて、アニメ第三章が近々公開されますね。

 

立ち絵には若干の古さを感じますが、慣れれば(かわ)いいぞ。照れの表情にバリエーションがあったのは、個人的には高評価です。一番の魅力は戦闘シーンですね。とにかく動きがすごい。迫力があって見入ってしまいました。

 

音楽

効果音が豊富ですね。剣戟の音や風を切って走る音が、戦闘シーンを引き立てています。BGMについては、特に気に入ったものはありませんでしたが、場面に合っていて良かったと思います。

 

雑感

  • セイバールートを読めたのが案外一番の収穫かもしれません。最初は無愛想だった彼女が、徐々に感情を表に出すようになるのが良かったですね。特に、デートの後、橋の上で自身の望みを理解してくれない士郎に対して、怒りを露にするシーンが印象的です。セイバーの見方が変わりました。彼女も一人の人間なんですね。
  • Heaven's Feelは評判に違わず素晴らしい。今までの信念を貫き通すか、それを捨てて桜だけの正義の味方になるかの選択肢があり、とても熱いです。
  • 言峰綺礼さん、胡散臭いし話も長いんですが、士郎と凛からの風当たりが強くて、ちょっとかわいそう。
  • 士郎が敵に突っ込んでダメージを喰らい、意識が飛んで気づいたら朝、みたいなパターンが結構多いです。
  • かっこいいキャラクター、かっこいい文章、かっこいい台詞、かっこいい演出。これはハマる人がいるのも頷けます。
  • プレイ時間確認したら55時間でした。超大作やな。
  • なんか凛がやたら可愛くてなぁ............うーんこりゃいかん、ツンデレ萌えが再燃してしまう。
  • 桜のヒロイン性、大変よろしい。
  • イリヤァーーーーーーーーーーーーッ!
  • 型月沼に片足突っ込みました。

 

Fate関連の知識を深めていきたいと思います。まずはFate/Zero読んでみようかな。

 

【感想】セカンドノベル ~彼女の夏、15分の記憶~

 

積みゲー消化中。

 

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「全てがひとつの仮定で、仮説で」

「≪ひとつの物語≫に過ぎない」

*本編より引用

 

概要

ヒロインの語る『物語』を通して、過去に起きた事件の真相を探っていくというミステリ作品。ヒントをもとにバラバラになったシナリオを再構成していく独特のシステムが特徴です。

 

登場人物

直哉(なおや)

本作の主人公。高校時代はユウイチと彩野と仲が良かった。大学進学を機に上京して以来、5年ぶりに実家に帰省。そこで彩野と再会し、彼女の語る『物語』をもとに高校時代に起きた事件の真相を探ることになる。

 

彩野(あやの)

本作のヒロイン。ユウイチとは幼馴染だった。高校時代、ユウイチの後を追って屋上から飛び降り、その時の後遺症で15分しか記憶を保持することができない。その事件から5年後、彼女は高校を訪れ、現実に起きた事件とどことなく関連のありそうな『物語』を突然話し始める。

 

ユウイチ

直哉の友人であり、彩野の幼馴染。高校時代に屋上から飛び降り、この世を去った。彩野の語る『物語』にも、アヤノの幼馴染として登場する。

 

アヤノ

彩野の『物語』に登場する少女。高校時代の彩野がモデルになっているようだが、現実の彼女とは性格的に異なる部分が多い。

 

由加里先生

高校の国語教師。ユウイチと彩野の飛び降り事件当時を知る人物。それから5年経った現在も同じ高校に勤務している。

 

千秋(ちあき)

近所に住んでいる少女。よく高校に忍び込み、ヘッドフォンで音楽を聴いている。

 

サクラ

彩野の『物語』に登場する謎の少女。コックリさんやおまじない、学校の怪談などオカルト系に興味があり、いつもアヤノにその手の話を持ちかけている。

 

システム

本作のシナリオは「ストーリーモード」と「フラグメントモード」を交互にこなしていくことで進んでいきます。

 

ストーリーモード

彩野が語る『物語』を聞くモード。ただし、彼女が記憶を保てる間限定という制限があり、15分経つと彼女の記憶は消え、『物語』は途中で終わってしまいます。先へ進めるためにはフラグメントモードで「あらすじ」を作成する必要があります。

 

フラグメントモード

彩野が語った『物語』の「あらすじ」を作成するモード。15分間に聞いたシーンを「あらすじ」としてまとめることで、次の15分が始まる際に彼女はそれまでの『物語』を知ることができ、ストーリーモードでその先の展開を語ることができるようになります。

あるシーンの「あらすじ」を作成する際には、彩野からそれまでの「あらすじ」、もしくはストーリーモードで手に入る「キーワード」の提示を求められます。彼女の言葉を手掛かりに、正しい「あらすじ」或いは「キーワード」を選ぶことで、新たな「あらすじ」を作成することができます。

 

ストーリーモードで彩野の『物語』を聞く⇒フラグメントモードで聞いたシーンの「あらすじ」を作成する⇒ストーリーモードに戻って『物語』を先へ進める、というのを繰り返すのが基本的な流れですが、そのまま進めていくと間違った結末に至ってしまう場合があります。その際にはフラグメントモードで、その手前のシーンのどこかに「選択肢」を作成し、正しい結末を迎えるための分岐を作る必要があります。

また、「あらすじ」が作成できないこともあります。その場合、どこかのシーンの「あらすじ」が足りないため、見逃している分岐がないか、それまでの展開をもう一度見直さないといけません。

正しい結末に至ることができれば、一つの「セクション」をコンプリートしたことになり、『物語』に次のセクションへ展開する可能性が生まれます。どのシーンから分岐するのかについては、セクションコンプリート後の登場人物たちの会話の中にヒントがあります。

 

立ち絵はさらっとしていてクセの無い感じ。ギャルゲーを普段やらない人にも受け入れてもらえると思います。

背景はとても丁寧で、影とかもくっきりと描かれているんですが、丁寧すぎるためにどこか非現実感がある感じです。『物語』でもキーワードとして登場する「夕焼け」が印象的であり、オレンジ色が鮮やかすぎて、なんというか凶暴な美しさがあります。

 

音楽

落ち着いた曲がほとんどですが、謎を解明する場面などでは、映画『エクソシスト』のテーマ曲みたいな緊張感を煽るBGMが流れます。同じパターンを繰り返す感じの曲、僕は好きです。

 

雑感

  • 面白かった!システムが特殊なので進め方を理解するまで若干時間がかかりましたが、ストーリーを組み立てていく楽しさがありました。
  • セクションを進めるにつれて明らかになる『物語』と現実との関係性、飛び降り事件の真相。最後の方はボタンを押す指が止まりませんでした。
  • プレイ時間は30時間ちょいです。ゲーム性が高いので少しずつ進めていっても楽しめると思います。
  • 屋上にたたずむ少女......風になびく黒髪......フェンス越しの夕焼け空......俺たちの元型的イメージ......。
  • ゲーム内で本編に関連した短編小説を読むことができます(以下の写真を参照)。有名ライターさん達の書き下ろし作品なので、お得感があります。

 

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PSPをこんな風に使うの初めてや......